第一話
[あまり費用をかけずに商品化できるアイデアを]
前記の「どのようなアイデアが良いのか」という法則は、「他社に持って行かれたらたいへん!」と思われるもので、通常は矛盾する、売れるかどうか(売れそうな顔つきをしているかどうか)という商品性と、法的に製造・販売の独占権を確保できるかどうかというパテント性(この場合、独占禁止法は適用されません)の2拍子揃ったものと言うことができます。しかし、あまり費用をかけずに商品化できるものが望ましいのです。
私の考えた「カバー付き履物」(拙著①参照)についてセーラアクト(株)(拙著②参照)に仲介を依頼したところ、あるスリッパメーカーが関心を示してくれましたが、カバー部分の金型代の見積りが180万円と出たため、結局商品化されませんでした。同じく拙著①で紹介した「容器」(石けん箱)も「哺乳瓶用温度調整器」も何社かのメーカーが関心を示してくれたものの、結局商品化されなかったのは、一つには金型代がかなりかかり、売れるかどうか分からないものにそんなに投資できない、と判断されたからだと思います。一般に、金型代が100万円以上かかるものが採用されるのは難しいようです。(後記の契約案に係る発明品の金型代は100万円以下だと思います。)
(社)発明協会発行の月刊誌『発明』(1998年4月号)で、ある成長企業の会長が--モノを創るときに大切なのは、未来のニーズを探ることなんです。これはお客様に聞いたってわかりません。消費者の暮らしぶりを知ることでニーズを仮定し、それを目指してモノを創る。そして、消費者がそれを使った時に初めて、これは素晴らしい、私が求めていたのはこれなんだとわかるんです。だから、本当にニーズは、お客様は知らないんです。--と述べています。これは卓見と言うほかありません。と言うより、あまりにも卓見すぎてなかなか理解されないのではないでしょうか。莫大なロイヤルティ収入につながるとともにメーカーはその5~10倍の利益を得られる、日常使う簡単な道具類の画期的な発明は、こういうものを製造・販売してほしいという要望が全く聞こえて来ないものの可能性が大きいと思います。しかし、普通は、--多くの消費者から要望されるものを商品化してもなかなか売れない時代に、要望が全くないものを商品化するのは無謀だ。--という常識的な判断によって否定されやすいのです。それでも、あまり費用がかからなければ、試しに商品化してみようという気持ちになりやすいはずです。
なお、上記のセーラアクト(株)は、例の著作権登録に引っ掛からないようにという日本弁理士会の文書をその会報に転載するなど、良心的な会社でしたが、平成14年9月に残念ながら事業をやめました。何年も仲介の成功事例がなかったからだと思います。
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